2020年2月14日
プレスリリース
8K+5G時代を先取りTCLの深セン工場に突撃!
ワールドクラスの最先端技術が集結!
TCLの本拠地では8K+5Gの技術も!
中国を本拠地とし、コストパフォーマンスの高い4Kテレビや、国内にQLED技術を採用したモデルを投入するなど、注目度を高めているブランド「TCL」。今回、特別にVGP審査員を務める鴻池賢三氏が、TCLの心臓部と言えるパネル工場を訪問取材。そこには8K/5G時代を見据えた最先端の取り組みと巨大施設がありました。
2019年に日本のテレビ市場に本格参入したTCL。4K/HDR対応はもちろん、量子ドット技術を採用した高画質QLED液晶テレビから、コストパフォーマンスの高いシリーズまで幅広くラインナップ。VGP2020では、初エントリーながらQLEDモデル「X10」シリーズが部門賞に加えて技術賞も獲得しました。また、2020年には日本で8Kテレビを投入すると発表するなど、最も勢いのあるメーカーとして注目を集めています。
TCLが最先端かつコストパフォーマンスの高い製品を送り出せるのは、ずばり、ディスプレイの核となる部品であるパネルから完成品のテレビセットまで、グループ内で一貫して生産を行う「垂直統合」がポイント。そこで今回は、TCLの心臓部といえるパネル工場(TCL-CSOT/TCL華星光電)を訪問し、併設されているデモンストレーション施設を中心に、最新の取り組みを取材しました。
テレビに本気! 「垂直統合」のビジネスモデル
TCLは中国恵州を本拠地とし、約2兆円もの売り上げ規模を誇る世界的な総合家電メーカーです。実のところ、1981年に磁気テープの製造販売を開始し、以降、カラーテレビの製造で急成長遂げ、2004年にはRCAブランドを獲得して世界最大規模に到達するなど、AVを祖業かつ得意としています。
TCLのテレビ製品の特長は、最も重要な部品と言えるパネルをグループ内企業「TCL-CSOT」で生産し、垂直統合体制で製造していること。少し詳しく説明すると、テレビの生産には、大きく分けて「垂直統合」と「水平分業」の2つのスタイルがあります。近年は、パネル工場の規模と投資額が巨大になりがちで、パネルは他社工場から購入し、最終のテレビセットは各メーカー(ブランド)が設計および組み立てを行う水平分業スタイルが増えてきました。
垂直統合でパネルから生産するには莫大な資金が必要で、企業としてはこれがリスクになりますが、最先端パネルの情報をいち早く得られるので、完成品のテレビ製品も一歩先を行けるのは大きなメリット。さらに、パネル工場が大規模で製造コストが圧縮できれば、完成品であるテレビ製品のコスト競争力にもつながることをご想像頂けるでしょう。
8K対応液晶パネルの生産体制も整う
今回は、深センの光明新区にある「TCL-CSOT」液晶パネル工場に訪問しました。TCL-CSOTでは工場にt1~t7のナンバリングを行い、初期のt1/t2と最新のt6/t7は大画面テレビ向けで深センに集積、t3/t4は小画面モバイル向けで少し離れた武漢に位置しています。
因みにt1は初期と言っても2011年に量産を開始したばかりの新鋭工場。t6は2018年に同社として初めて超大型3370×2940mmのマザーパネルを生産開始した、いわゆるG11(第11世代 厳密な規定はなく、10.5世代と呼ぶことも多い)工場で、これは世界的にも最先端と言えるものです。
t6とt7は4Kに加え8Kパネルの生産も行うなど、TCLが8Kテレビ生産に向けて着実に歩みを進めていることが分かります。また、TCL-CSOTはTCL以外のテレビメーカーにもパネルを外販するので、TCL以外の複数のブランドからも8Kテレビが続々と登場することでしょう。
因みに、G11(3370x2940mm)のマザーガラスとは、6.5畳(江戸間)相当の大きさで、75型を最大6枚無駄なく面取り可能。つまり、75型の8Kテレビがぐっと身近な価格になることが期待できます。
t1-t7の解説パネル。総投資額はなんと3兆円規模と豪快!
<深セン> t1 G8.5 テレビ向けパネル/t2 G8.5 テレビ向けパネル/t6 G11 4K/8Kテレビ向けパネル/t7 G11 4K/8Kテレビ向けパネル
<武漢> t3 G6スマホ・タブレット・車載ディスプレー向け液晶パネル(主にLTPS)/t4 G6 モバイル向け有機EL(アクティブマトリクス式)
宇宙船の内部のように未来的な展示スペース
今回はt6工場に併設されたデモンストレーションスペースの展示内容を中心にご紹介します。工場にこうした施設を設けているのには理由があります。TCL-CSOTはパネルを外販しているので、TCL以外のテレビメーカーに取り組みや技術紹介を行うのは極めて重要。白を基調とした広々としたスペースは、映画に出てくる宇宙船の内部のようでもあり、未来を感じるものです。
では、展示内容を写真と共に解説して行きましょう。8Kがもう未来でないことが実感できるはずです。
折り畳み可能なスマホ用の「アクティブマトリクス式有機EL」。武漢のt4工場で製造。CES2020ではTCLが自社ブランドのフォルダブルスマートフォンを発表済みで、ほか、中国系端末メーカーに採用が決まっているとのことで、手にできる日も近そうです。
折り畳み可能なスマホ用の「アクティブマトリクス式有機EL」。武漢のt4工場で製造。CES2020ではTCLが自社ブランドのフォルダブルスマートフォンを発表済みで、ほか、中国系端末メーカーに採用が決まっているとのことで、手にできる日も近そうです。
最先端機器を導入し安定した品質を実現
今回はt2工場の内部を見学させて頂きました。撮影は一切禁止とのことで、TCL-CSOT提供写真以外はお見せできませんが、筆者が見た限りでは、過去訪問した日本のパネル工場と寸分違わぬ風景。液晶パネルとTFT(電極)パネルを製造して張り合わせるというのは基本ですが、生産ラインには最先端機器を導入しほぼ無人で製造するのも同じ。これなら世界中どこで作っても品質は安定していると思われ、輸送を考えるとテレビ工場に近い深センという地の利が活きそうです。
因みに基盤といえるマザーガラスの製造は併設されたAGC(旧商号: 旭硝子)が担当。これも筆者が日本で見てきた光景と同じで、協力工場が同じ敷地で生産し、さらに工場内部で連結することで輸送を不要にできるのです。何より、中国で伸びる世界規模のパネル生産に、日本企業の技術が生かされているのは嬉しく思いました。日系企業のパネルおよびテレビ生産規模は縮小傾向にあっても、テレビ作りには欠かせない存在なのです。
巨大パネル工場から感じる勢いと熱気
パネル工場に約3兆円の投資を行い、大規模生産によるコスト低減や、超大画面8Kといった最新パネルの生産を行うCSOT。今回、深センの工場に訪問し、そのスケールや先進性に加えて、周辺地区の工場や鉄道建設工事ラッシュも目の当たりにして、圧倒的な勢いと熱気を肌で感じました。
昨年までは少し先と思っていた夢の8Kテレビ。中国勢の積極的な取り組みにより、意外と早く消費者に近づいてきそうな気配を感じました。2020年、さらに多くの8Kテレビが登場することでしょう。